2017/03/02

マイナス感情のストレス:2 『夜と霧』

『夜と霧』という本がある。


オーストリアの精神科医であり心理学者の

ヴィクトール・フランクル著。


そこには、

アウシュビッツで強制労働させられていた

ユダヤ人たちの記録が存在している。


アウシュビッツとは、

ヒトラーの政権下、

ナチスのユダヤ人絶滅計画で行われたとされる

処刑場の代名詞にもなった収容所の名前。



1955年に作られた同名のフランス映画は

この本を元にしている。

30分のドキュメンタリー作品。


DVDにもなっているこの映画について

アマゾンで調べた時にカスタマーレビューを読んだ。


みな高評価ではあるが、

原作を読んだ私には、この映像を見る勇気が無い。



ヴィクトール・フランクルは、

ナチスによって強制収容所に送られた一人。

妻も娘も両親も、すべて収容所で死んでいった。


収容所は、人間の尊厳をすべて無視し、

動物以下の生活を強い、

あまりの恐怖と飢餓に自殺者も多数出たこの世の地獄だった。



この地獄の中で、

収容されたユダヤ人たちは何を思い、

どんな人達が生き残り、

どんな人達が自殺していったか…


心理学者として、

また自分自身の感情も踏まえて、

人間の本当の極限を洞察し続けた記録が『夜と霧』。



文章として理解は出来ても、

現実としては想像もつかない。

できれば想像もしたくはない。



この最悪の世界アウシュビッツ収容所での日々の描写は、

人間が同じ人間に行った行為だとは到底思えない。



が、とりあえず今は、

『生命の保証もない極限状況下』という一側面をとらえ

その中での

人としての在り方についてだけ考えてみた。


ある時、収容所の班長と言われる男が、

フランクルの所にやってきて言った。


仲間の死のほとんどが『自己放棄』(自殺)によるものだ。

精神的な崩壊によって次の犠牲者が出ないようにするために

何をなせば良いかをみんなに教えて欲しい


と。


フランクルは言った。


「未来は未定であり、

 いつ今よりも労働条件の良い所に移送されるか分からない」



「私達が過去の充実した生活の中、

 豊かな経験の中で実現し、

 心の宝物としている事は、

 誰にも奪えない」



「私達が苦しんだ事も、

 すべては過去の中で永遠に保存されるのだから、

 ただ苦しむのでなく、 

 友に対しても家族に対しても

 人間の誇りを失うことなく

 生き続けることが大切だ」



フランクルの言葉の中に何かの光を見いだし、

未来を見つめる力を自分の中に宿した人達は生き残り、

それが叶わなかった人達の多くは破綻していった。



もし、自分が

フランクルと同じ状況であったなら、

何を考え、どのような行動をとっているだろうか?



劣悪な環境下での過酷な労働、

未来どころか明日も見えない。



理不尽に次々と命が消されていく異常な世界。

その異常な非日常も、

長く続けば『日常の景色』となる。



精神が、受け入れる事も拒否する事も出来ないままに

現実を凍りつかせたまま

永遠に立ちすくんでいるのだ。



希望も救いも見出せない日々の中で、

人はどうやって生きていけるのだろう?